第9回 自己査定とは?
今月号は「自己査定とは?」です。
さて、この連載のコアな読者を以下のように想定します。「若手社長で、店舗数も既に7店舗。今月には8店舗目の新規オープンが決定。そして、年内に2店舗の新規出店を目指しており、年初に計画した10店舗、年商10億円の体制まであと一息」と。
そんな中、見事、優秀な税務担当責任者の採用もでき、若手社長は一安心でしたが、その財務担当責任者よりこんな話がありました。
「社長!年間5店舗の新規出店に伴う積極的な投資負担により、銀行の自己査定の見直しによる債務者区分が心配ですね」。若手社長は「自己査定?」「債務者区分?」って何のことと困惑しました。そこで、若手社長は詳しく内容を聞いてみることとしました。
最近、銀行への対応もうまくなり自信を持っていた若手社長には少しショックでしたが、大丈夫でしょうか?
早速、今月も質問です!若手社長、ショックを受けている、そんな時間はありませんよ!
質問1:自己査定とはどんなものでしょうか?
以下の項目から、必要と思われるものを1つ選んでください。
- 銀行が取引先の財務分析をして勉強する作業
- 銀行が取引先に対してどんな取引ができるのかを分析する作業
- 貸出金が不良化していないかを判定する作業
一般的な答えは3です。
3の作業を実施し、銀行は以下の6段階の債務者区分を決めます。
「正常先」
「要注意先」
「要管理先」
「破綻(はたん)懸念先」
「実質破綻先」
「破綻先」
銀行は「正常先」とお付き合いをしたいのです。「要注意先」になると、銀行の融資姿勢は一気に後ろ向きになります。また、金利の引き上げ、担保提供を求めてきます。
さて、「正常先」と「要注意先」の違いを勉強しましょう。今回は「要管理先」以下の説明は省略します。
質問2:「要注意先」の可能性がある用件はどのようなものですか
以下の項目から、該当すると思われるものを3つ選んでください。
- 直近の決算が赤字、または繰越損失があること
- 借り入れ負担が重く、返済能力が低い
- 不良資産があり、実質的には赤字決算、または債務超過
- ワンマン社長で従業員の定着率が低いこと
- 風評が悪いこと
- 赤字店舗があること
一般的な答えは1~3です。
なお、6の赤字店舗があることを銀行は嫌がりますので、極力、早期のコスト削減や閉鎖の検討が必要でしょう。
このように、一度でも赤字決算すると、「要注意先」に認定される可能性がでてきます。一度「要注意先」のレッテルを貼られると、1年後の黒字決算をするまで「要注意先」のまま銀行取引をしていかなければなりません。その間、好立地の物件があったとしてもなかなか借り入れができず、新規出店ができない可能性があります。
ちなみに、私が銀行員時代、ある飲食チェーン店の社長から聞いた話ですが、過去に新規出店の投資負担から100万円の赤字決裁をしたことがあったが、100万円の赤字でも銀行の対応が後ろ向きになったそうです。
今更ながらその銀行に当時の話を聞いてみると、債務者区分が「要注意先」になったような話しぶりだったそうです。あのころ毎月、月次決算や予算管理をしていれば間違いなく黒字決算は可能であったかと思うと、高い授業料をはらった感じですねと、との社長は笑いながら話していました。その際に私は過去の決算を見たのですが、売上に対する食材などの棚卸しの金額が少なかったので、しっかり棚卸しをしていればそもそも黒字決算であったようですと話したら、さらに悔しがっていたことを思い出します。
もちろん、過去数年間きちっと黒字決算をしてきた会社が一時的に100万円の赤字決算をしたからといって、すぐに「要注意先」になるようなことはないとは思います。しかし残念ながら、ある銀行では「要注意先」となるケースがるので注意しましょう。
ちなみに自己査定は、基本的には毎年、銀行の決算である3月(本決算)と9月(中間決算)の2回行うケースが多いです。
従って、3月の自己査定で「正常先」の認定を受けても、その後、新規出店の加速による財務体質の悪化などの影響から「要注意先」に変更されることもあります。従って、9月には注意が必要な時期でもあります。また新規出店の計画を大幅に下回る状況ですと、早期の対策が必要であることはいうまでもありません。
質問3:新規出店の加速により、赤字決算にはならなくても大幅な減益となった場合、どんな資料で銀行に説明すればいいでしょうか?
以下の項目から、該当すると思われるものを2つ選んでください。
- 過去の既存店の業績推移の好調さをアピール
- 中長期の事業計画で、既存店は好調で新規店舗の通期稼動による収益力アップの計画を策定
- 不採算店舗の撤退の計画
- 決算後の店舗別の月次損益の推移を説明
一般的な答えは1,2。
もちろん、3,4も重要ではありますが、1と2の資料で既存店の安定した収益があり、銀行からの取引実績も厚く、資金繰りにも問題がないことを説明する必要があります。
ちなみに、前期の決算よりも数字が落ち込むと各銀行とも他の銀行の取り組み姿勢の動向について気にします。従って、決算説明や自己査定の時期には、1、2の資料を基にきちっと銀行に説明する必要があります。
銀行では今後の計画がないと、本部の審査部に対して身動きが取れないのが現状ですので、業績が苦しいときほど、きちっとした資料を作成し、リアルタイムな情報の開示に心がけましょう。
では、来月の10月号では「銀行員との付き合い方・上級編」について説明します。お楽しみに!特に経理財務の役員は必見です!






