第11回 銀行向け決算・企業格付の対策準備
今月号は「銀行向け決算・企業格付への対策準備」です。若手経営者の皆さん、新規出店は順調ですか。2月号「企業格付」、5月号「銀行への決算説明の仕方」を参考に実践されたところは成果が出ましたね。
しかし、来年以降も魅力的な物件情報が来ています。したがって、引き続きスムーズな資金調達をしなければなりません。2009年3月期の決算や企業格付対策をしなければいけません。ホッとしている場合ではありません。3月決算の会社は、今からさまざまな対策をしなければなりません!
質問1:銀行担当者が社長から決算説明を受けるとき、心の中で祈ること、それは?
以下の項目から、3つ選んでください。
- 黒字決算であってほしい。
- 債務償還年数が10年以内であってほしい。
- 前年期決算よりも利益率がアップしていてほしい。
- 前年期決算よりも利益額がアップしていてほしい。
- 不良資産がなくなっていてほしい。
- 前年期決算よりも、店舗別損益で赤字の店舗が増えていないでほしい。
- 前年期決算よりも自己資本比率がアップしていてほしい。
- 事業以外の投資などをしていないでほしい。
一般的な答えは(2)、(4)、(6)。
もちろん、(1)~(8)の全ての項目について、銀行担当者はどうかなと考えますが、(2)、(4)、(6)の指標が悪いと、審査部に突っ込まれるので、どうしたらうまく決算説明ができるのか、悩むケースが多いのです。銀行員時代、私もそうでした。
なぜ、銀行担当者は、(2)、(4)、(6)を気にするのでしょうか?
(2)の債務償還年数とは、どのくらいの期間で有利子負債や割賦を返済できるかを示す指標です。この指標が悪化すると、返済能力が劣るとのレッテルを張られ、追加借入の審査のハードルがかなり高くなってしまいます。
(4)は、前期より利益の実額が減少した場合、新規出店などをしている場合でないと、間違いなく審査部から指摘を受けます。そうすると、新規出店の案件を通すのは至難の業です。なお利益率が低下した場合は、新規出店の先行投資負担などの理由を説明できるケースがあります。利益額が減少するのは、銀行担当者としてはとても悩む事項なのです。
(6)の店舗別損益は、店舗の収益力を測る資料です。前期より赤字の店舗が増えるのは、サッカーで例えると審査部からのイエローカードです。従って(2)、(4)、(6)の指標がすべて低下してしまうと、レッドカードになる可能性があります。そうすると、優秀な銀行担当者でも、今までのような積極的な対応はしてもらえないので注意しましょう。
質問2:どんなことをすれば、イエローカード、レッドカードをもらわず、ピッチに立ち続け、活躍できるのでしょうか?
以下の項目から、必要と思われるものを3つ選んでください。
- 09年3月時点の予想される貸借対照表、損益計算書を作成する。(予算や前期実績などを参考にする)。
- (1)の数字に基づき、経営にかかわる財務指標を計算し、08年3月期の財務指標と比較する。
- どうしたら09年3月の税務指標の数字が前期決算を上回るのか、管理部門の責任者と情報交換し予算の見直しを行い、対策を講じる。
- 店長会議で売上増の施策について情報交換する。
- 09年3月決算に向け、一致団結するために、社員旅行(研修含む)を実施する。
- 社長のトップダウンの下、さらなるコスト削減を推進する。
一般的な答えは(1)、(2)、(3)。
もちろん(4)~(6)の項目も重要です。しかし、客観的に前期の財務指標と今期の予想指標を比較し、レッドカードをもらわないように決算対策をしましょう。業績が厳しいときでも、何とか今のうちから対策をすれば、一つの財務指標だけでも前期決算よりも上回るようにできるものです。本当です!
本当に業績が厳しい時でも前期の財務指標を上回れるのかと思っている社長がいるかもしれませんので、少し説明しておきます。
例えば、自己資本比率はとても重要な財務指標です。自己資本比率(自己資本÷総資本×100%)とは、企業が使用する総資本のうち、自己資本の占める割合の程度を示し、安全性を見る指標です。銀行に限らず、リース会社もとても重要視しています。
自己資本比率をアップさせるには、総資本の金額を減らさせればいいのです。総資本を減らすには、さまざまな資本を一時的に圧縮すればいいのです。 例えば、ちょっとやりくりして、09年3月下旬に発注しなくてもいい食材や消耗品などは、09年4月1日に発注する。新規出店にかかわる手付金や保証金の半金などは、09年4月1日にしてもらう。こんなささいなことで自己資本比率が10%になるか、9.9%になることもあると思います。その結果、企業格付の点数が変わり、来年度の金利などに影響してくる可能性があります。
質問3:なぜ、今のうちから質問2のような分析をした方がよいのでしょうか。
以下の項目から、2つ選んでください。
- 来年の予算計画を策定する上で、非常にいい時期で、早い段階での課題を社長、社員ともに共有できる。
- 早い段階での課題の認識ができれば、早い段階での赤字店舗のてこ入れが可能となる。
- その結果、その対策の効果が、数ヶ月後に表れ、09年3月決算意向の4,5月の数字が向上していることを、09年3月期決算の決算説明(6月)の時期に説明できる。
- 管理部門のコスト削減の意識が高まり、固定費にかかわらず、シフト管理の強化による人件費削減、仕入先の見直しなどを実施できる絶好の機会となる。
一般的な答えは(3)、(4)です。
もちろん、(1)、(2)があっての(3)、(4)です。しかし、09年3月決算の財務指標の向上のため、今までのメスを入れなかったところを客観的に見直す機会となります。それが、管理部門の経営意識の観点からの視野を広げ、経営企画の志向を持ち始める機会ともなります。そうなれば、業績アップは間違いないでしょう。
私が銀行員時代、ある飲食店チェーンの社長が、こんなことを言っていたのを思い出します。
「管理部門の人材は受身の人が多い。もちろん、社内にはいろいろな人材がいた方がいいが、経営者の立場から言うと、さまざまな意見を持って議論してほしいと感じることがある。従って、管理部の社員には、店長会議などにも出席してもらっている。まだ、目に見える成果は挙がっていないが、現場の感覚を感じてもらい、意識改革をしてもらえることを信じているよ」ちなみに、この会社の業績は良いと聞いております。
では、来月の12月号では「ちょっと豆知識」について説明します。意外と、いや、とても役に立ちますのでお楽しみに!






