第7回 数値化による社員の意識改革
今月号は、本社人事労務部門のコスト削減の基本的な考え方を説明します。
以前、あるチェーン店社長から「うちの会社の人事労務部門で具体的にコスト削減できることはありますか?」と質問を受けたことがあります。
では、早速、質問です。
質問1:人事労務部門ができるコスト削減で、最も大事だと思うものは何でしょうか?
次の中から1つの項目を選んでください。
- 正社員・アルバイトの採用コスト削減
- アルバイトのシフト管理の強化による人件費削減
- 本社管理部門の給与計算などのシステム化による人件費の削減
- セントラルキッチン導入での業務効率化による人件費削減
- 賄い料理の有料化
- アルバイトの月額交通費の上限設定
- 覆面調査費の削減
- 日払い給与の支払制度廃止による業務量の削減
- 人事評価制度の見直し
- 人の動きを「数値化」すること
正解は(10)。もちろん(1)~(9)も該当するかもしれませんが本質的には(10)に尽きるでしょう。
さて、人の動きを「数値化」するとはどういうことでしょうか。
簡単に言うと、店舗のすべての業務に通信簿を作るというイメージです。あなたはこれができたので70点、ただし今後これができれば100点ですねと言えるようなものを作るということです。
では、具体的に説明します。例えば、本社経理財務部が作成した月次の店舗別損益推移から、A店舗がほかの店舗よりアルバイトの人数が多く、人件費が高いとの報告を人事労務部門の社員が受けたとしましょう。その際、本社の人事労務部門の社員の方は次の行動をしてください。
第1ステップ
A店舗の店長と人事労務部門の社員は、なぜほかの店舗よりアルバイトの人数が多くなっているのかを分析する。
第2ステップ
1日でもA店舗店長に自社優良店で仕事をさせ、アルバイトの管理を経験させる。また人事労務部門の社員はA店舗と優良店で同じものを注文、料理が出てくる時間を集計。同時にアルバイトが料理を持ってくる品数、会話の内容をメモ。
第3ステップ
A店舗の店長と人事労務部門と反省会を実施し、翌日から改善策を実施。
このステップを行うと以下のことが分かります。
優良店のアルバイトは、お客さまから1つの注文を受けたとき、実は複数の仕事をしていることが分かります。例えばこんな感じです。
(1)本日のお薦め料理もセールスしている。
(2)お客さまから、本日のお薦め料理をオーダーしていただいたら、店内に聞こえるように、「"本日のお薦めの羅臼産のほっけ"ご注文いただきました!」と笑顔で話している(ほかのお客さまへのセールスも実施!)。
(3)空いている食器を片付けている。
(4)厨房に戻るとき、他テーブルの状況も把握。
(5)優秀なアルバイトは、厨房に戻るときに、他テーブルの注文もゲットしている。
なお、優秀な厨房の社員は品目ごとに料理時間を数値化することで、ホールのアルバイトに「何分後に提供できそうだ」「その後の注文がないので、3番のテーブルにビールを持っていくとき、お薦めの料理を薦めて!」「料理ができるまでの間にトイレチェックをしておいて!」などの指示もしています(すごいですね)。
この(1)~(5)を実践することで、すぐにホールのアルバイト人数を削減できるでしょう。また、同時に売上げもアップするでしょう。
ちなみに本日のお薦め料理のセールストークは、店長が紙に書いてアルバイトに渡しておきましょう。そうしないと、お客さまから質問されたときに間違いなく「少々お待ちください」と答え、1、2分待たせてしまうケースがあります。この無駄な時間がお店に対するイメージを悪くします。
なお本社人事労務部門の社員は、例えば次のようなアルバイトの人事評価項目を構築しましょう。
優良店のアルバイトは(1)~(5)を行っているから100点。A店舗のアルバイトは(1)、(2)、(3)しか行っていないので70点と数値化する。
その結果A店舗の店長は、このアルバイトは60点だが90点まで引き上げるためにはこんな教育をしなければならない、という意識が明確になる効果も出てきます。同時に、アルバイトの人事評価と連動した給与体系の構築もしましょう。
本社人事労務部門の社員は数ヵ月後、A店舗を訪問し、以前と同じ料理を注文してアルバイトの人事評価項目の点数がどうなっているか、料理が出てくる時間がどうなっているのかを集計して、A店舗の店長にフィードバックしましょう。
これを実践することで日々、社員には効率的な仕事のやり方を身に付ける「意識改革」のつぼみが出てきて数ヵ月後には花になっているはずです。
では、最後の質問です。
質問2:ちなみに、さらに社員の「意識改革」を推進させるために重要なものは何でしょうか。次の項目の中で、これだと思うものは何でしょうか。
次の中から1つの項目を選んでください。
- 会社が、店長の常連客づくりのフォローをする。
- 独立支援制度を確立する。
- 人事評価制度を確立する。
- 自社、他社の優良店に視察できる時間や料金的な補助をする制度を確立する。
- 社員旅行(研修)の企画運営。
正解は(1)。もちろん(2)~(4)も必要です。
しかし、人間は自分の顔で勝負をしたいと思っています。常連客ほど、自分の存在意義を満たしてくれる魔法はありません。また、店長の常連客が増えれば、良いこと、悪いことも話してくれるので、店舗運営にはとても有益なことでもありますね。
現在、チェーン店では店舗異動もあるため、店長の顔を売り込むことに疑問を持っている社長もいらっしゃいますが、一度、業績不振店で行ってみてください。
現在、チェーン店でも地域限定メニューなどを導入して差別化をはかっているケースはありますが、まだ、店長の個性を少しでも反映させている居酒屋チェーンは少ないと思います。品質やオペレーションの面で難しい面はありますが、年に数回、店長オリジナルの企画を行うだけでもいいかなと思います。例えば店長の誕生月には月間の割引セールスを行うなどの企画はいかがでしょうか。ちなみに店長の名前を覚えられた店の業績は好調ですし、社員の定着率も高いです。
儲かる本社人事労務部門の社員はこのようなヒット企画提案などを人事評価に加えることも必要。
次号ではより具体的に、人の動きの「数値化」による業務改善、コスト削減について話していきたいと思います。






