数値を伝える楽しさ・難しさ
~経理部のコミュニケーション能力アップ作戦~
2月号では、店長が目覚める数値管理による意識改革について説明しました。
一方で、経理分お社員も、店長と共に意識改革をすることが重要です。経理部は、毎月、試算表や店舗別損益などを作成し、時間帯別売上高、来店客数、客単価などの数値管理もしているでしょう。
しかし、経理部は日々の業務に追われ、単に先月より、昨年より、売り上げが増えた、減少したなどの数字の管理となっているケースが多いのです。
銀行からの借入金をマラソンの例に説明
たとえば、ある飲食チェーンの本社での会話の一例を書きます。
社長「先月の売り上げは3000万円で、前年同月比120%だったよな?もちろん、新店の効果があるので、既存店ベースでは97%だけど」
経理部社員「そうです。全体では売上げは増加していますが、既存店が苦戦しています。同業他社よりは良い方だと思いますが」
そこで私は、この会話を聞いた後、社長に次のような質問をします。
「新店舗効果で、売上高は前年比ベースで増加しているようですね。しかし、前期と比べて会社の体力は健康ですか?」「新規出店のために銀行借り入れ、リース会社で割賦取引などの負債が増え、売上げが増えてもぜい肉が付いていませんか?」
売上げや利益が増えても、借入金利息や借入金元金が、約定通り返済できなければ、健康な体力があるといえません。
毎月、健康な体であったのか、将来も健康な体でいられるのかなどについて、社長、経理部の社員は話し合う必要があります。
従って、経理部社員には、単に、「そうです。」だけではく、「昨年より厳しい環境でも、新店効果で利益額は増えていますが、年間の銀行借入金返済、割賦返済が1200万円増えています。現状、新店の利益だけでは、この年間1200万円の偏在はとても大きな負担なので、今後の計画の見直しが必要です。」と経理部社員は社長に答えてほしいですね。
以前、ある経理部社員が、私に、こんな例えを出して説明してくれました。
「自分は、マラソンが趣味ですが、昨年新規出店による銀行借り入れの返済負担は、自分の体重が12kg増えた体重でマラソンをしているような感じです。間違いなく、そのうち自分の体重でひざが故障して、フルマラソンを完走できなくなるでしょう。
その前に、不採算店の撤退などを検討します」
こんな、日ごろの生活なとのたとえを交えながらの数字の説明は、とても身近に感じられました。
社長に「ちょっと待てよ。自分が思っていた以上に、早急に対策を取らないと、自分ひざは故障するかも?」と思ってもらえるような"伝える能力"が、経理部社員には求められます。
一般的に、経理部社員は、今期、新規出店することで自己資本率がどれくらい低下する、銀行借り入れが増えたので年間の支払利息がこれくらい増えるなどの財務分析、また、同業他社と比べて自社は良いのか悪いのかなども分析するでしょう。
しかし、この分析で終わるケースが多いのではないでしょうか?
そこで本当に重要なのが、今後、自分が勤めている会社は、どのような方向に行けばよいのかという「経営方針」を決めて、そのための「物差し」に基づいて、数字の話をしていく必要があります。
また、経営者は、経理部長社員意対し、この「物差し」の観点からは、今期の数字は良いのか悪いのかなどの議論ができるような雰囲気づくりの構築が必要でしょう。
その結果、必ず経理部社員は、自分の仕事に対するモチベーションアップにつながり、どのように経営者に数字を伝えればよいのかを考えるようになります。
このことが、社長の理念などを受け継いだ「金庫番」を育てる第一歩になるでしょう。
社長は、経営者は、いつの間にか、経理部の中心的な社員の発言に対して、自然と耳をかすようになってきます。
そして、金庫番が育てば、経営方針に対し、今は、どのような方向に行けばよいのかの判断について議論できるようになるでしょう。
経営者としては、この議論ができるようになれば、さらに会社は発展していきます。
飲食チェーンのトレンドを週3回ディスカッション
しかし、ある社長が私に、「経理部の重要性は分かっている。しかし、このような議論ができるように人材を育てることは難しいんだ」と言ってきたことがあります。
ではどのように育てればよいのでしょうか?
もちろん、金庫番を育てるには時間がかかります。
しかし、以下のことを1年間、実践してみてください。簡単なことですが効果的てきめんです。
「日研MJ」という新聞があり、毎週3回発行され、必ず飲食に関するフード欄の記事がありますよね。すでに、会社で定期購読されているかもしれませんが・・・・・・。
そこには、最近の、ある飲食チェーンが新しい業態を開発したとか、海外進出するとか、さまざまな最近のトレンドが記載されています。
また、面白いことに、必ずフード欄の記事の中に、同じような意味の言葉が3つ出てきていることが多いことに気が付きます。
(1)ある飲食チェーンが低価格の新業態を開発
(2)ある飲食チェーンは、低コストで新規出店できる業態を開発!
(3)1皿100円の回転寿司チェーンの業績が好調!
経理部社員は、このトレンドを週3回、軽く、ディスカッションするだけで、1年後に、経理部の社員の話す内容が、面白いくらいに変わります。
その際、こんな楽しみ方もしてみてください。さらに効果てきめんです。「日研MJ」には、情報企業の業績に関する記事(例)もあります。
「本決済が全年よりも悪化。理由は原材料の価格上昇による値上げの影響か?」
そこで、集客力アップのため、近隣に割引チケットを配布したら集客アップしたので、全店でも割引チケットの配布を行う方針とのコメント。
また、「今期の業績予想は売り上げ、利益とも増収増益」という記事があったとしましょう。
この記事について、社長も含め経理部社員とディスカッションし、その後の業績が上向くのかどうかの検証を見てみましょう。
上場会社は4半期ごとに業績の推移を開示しているので、将来を予測し、自分お予想を検証するのにはとても良い勉強になるでしょう。自分の考えがどうなのかを判断するため、自分の家の近くにあるその飲食チェーンに食べに行く経理部社員も出てきています。
このようなことを、経理部の皆で行うと、単に、数字を作成するだけでなくk、将来の数字がどうなるのかなどを考える「癖」が生まれてきます。
そして、この考えを、頭の中で考えるだけでなく、しゃべる「癖」をつける環境を継続的につくりましょう。
やはり、頭の中にどんな良い案があっても、実際にしゃべって、相手に伝わるコミュニケーションがなければ意味がないですよね。コミュニケーションも、筋肉と同じで、定期的に意識をしながら自分の意見を話さないと、その能力は退化しますからね。
このようなことを経理部社員ができるようになれば、とても個性にあふれれた、人間味のある人材が育ち、必ずや経営者の右腕となっていくことでしょう。
さて、4月号では、社長、店長、従業員が楽しくなる数字の意味についてお話しします。





